企業の間でこれまで減らし続けてきた社宅や社員寮を復活させる動きが相次いでいます。人材の確保がその背景にあり、社員の満足度を高めようという特徴があります。

大手商社の伊藤忠商事は、女性社員向けの寮を新たにつくり、3月から運用を始めました。
2か所に分散していた寮を統合した形で、4月に入社した新入社員に加えて、これまでの寮に住んでいた社員も順次入居しています。
それぞれの部屋には、最新の家電を備えたほか、ベッドには高性能なマットレスを取り入れ、心拍や呼吸などを測定して睡眠の質を高める機能があります。
一方、大和ハウス工業の子会社は企業向けに社員寮の物件を賃貸契約で提供しています。
供給数はこの5年で1.5倍に増加し、企業からの引き合いが増えているということです。

その物件の一つ、大手建設会社が3月に東京23区内に借り受けた単身の社員向けの寮は、これまで首都圏の郊外に分散していた社員寮を集約しました。
老朽化が進み、職場からも遠く不人気だったということで、新たな社員寮は多重のオートロックなどで防犯面を強化し、ラウンジや食堂などの共用スペースを充実させたほか、会社までの通勤時間もおよそ半分に短縮されたということです。
3月から住み始めた20代の社員は「家具・家電がそろった部屋の中で生活が完結するので1人の時間も持てるし、施設内で同僚と一緒に過ごすこともできる。廊下もカーペットなので、足音が気にならないのもうれしい」と話していました。

この社員寮を賃貸契約した竹中工務店人事室の渡邉一彦さんは「以前の寮は風呂も共同で、若い人には受け入れられない施設だった。人材獲得の面からも寮の満足度は重要で、家賃や物価も上がる中で社員の経済的な負担を減らしていきたい」と話していました。

賃貸の社員寮を提供する大和ライフネクストの長谷川雅さんは「採用力を強化したい企業からの問い合わせが多く、供給が追いついていない。賃金だけでなく住宅への手当にも目を向け、質の高い寮を提供しようと考える企業が増えている」と話していました。
国が5年に1度行っている調査によりますと、社宅や社員寮は、バブル崩壊のあと、企業の間でコストカットが進み、1993年の推計205万戸をピークに減少が続き、2018年には推計で109万戸とおよそ半数となっていました。
しかし、2023年の調査では推計で130万戸と再び増加に転じています。